「金利のある世界」が、いよいよ本格的に戻ってきた。
日本銀行が9月17、18日に開く金融政策決定会合で、現在1%の政策金利を1.25%へ引き上げることを本格的に検討していると報じられた。
実施されれば、今年6月以来3カ月ぶりの追加利上げ。政策金利1.25%は約31年ぶりの高水準となる。
「0.25%上がるだけでしょう?」
そう思う人もいるかもしれない。
しかし40代にとって、今回の利上げ問題は決して小さな話ではない。
住宅ローンがある。
子どもの教育費が増える。
老後資金も準備しなければならない。
NISAで株を買っている人もいる。
一方で、銀行にはそれなりの預金もある。
つまり40代は、金利上昇の影響を家計のあちこちから受ける世代なのである。
すでに住宅ローン金利は上がり始めている
利上げはまだ決まったわけではない。
しかし住宅ローンの世界では、すでに金利上昇が始まっている。
9月、大手5行は10年固定型の最優遇金利をそろって引き上げた。
さらに利用者の多い変動型でも、三菱UFJ銀行は0.25ポイント引き上げて1.195%、三井住友銀行も0.25ポイント引き上げて1.525%としている。
固定金利も上がっている。
住宅ローン比較サービスの集計では、9月のメガバンク10年固定金利は3.84%、フラット35は3.46%。フラット35は同サービスが集計を開始した2018年以来の最高水準になった。
「超低金利だから、とりあえず変動で借りておけばいい」
そんな時代とは明らかに状況が変わっている。
40代・住宅ローン残高2000万円ならどうなる?
では、金利が0.25%上がるとはどういうことなのか。
単純化して考えてみよう。
住宅ローン残高が2000万円あるとする。
2000万円の0.25%は年間5万円だ。
もちろん実際の住宅ローン返済額は、元利均等返済なのか、残りの返済期間が何年なのか、銀行の商品設計などによって変わる。
したがって「必ず年間5万円返済が増える」という意味ではない。
しかし重要なのは、0.25%という小さく見える数字でも、2000万円、3000万円という借金に掛かれば無視できない金額になることだ。
しかも今回一度で終わる保証はない。
日銀はすでに今年6月にも政策金利を引き上げている。今回さらに1.25%になれば、わずか3カ月で追加利上げとなる。
市場では、その先の金利水準まで意識され始めている。
40代で住宅ローンがまだ10年、20年残っている人にとっては、「今月いくら上がるか」よりも、これから金利のある状態が何年続くのかの方が重要だ。
なぜ日銀は金利を上げようとしているのか
背景にあるのは物価だ。
日銀は2%の物価目標を掲げているが、中東情勢や円安などによる物価上振れリスクが意識されている。
さらに円安が進めば、輸入品の価格が上がる。
原油。
天然ガス。
小麦。
飼料。
原材料。
日本はさまざまなものを海外から輸入しているため、円安は時間差で私たちの生活費に跳ね返ってくる。
そこで金利を引き上げれば、日本円を保有する魅力が相対的に高まり、円安を抑える方向に作用する可能性がある。
実際、日銀の追加利上げ観測などを背景に、ここ数日は円相場にも変化が出ている。
つまり、
円安を抑えたい。
物価上昇も抑えたい。
そのためには金利を上げたい。
という構図だ。
しかし、ここには問題がある。
金利を上げれば、住宅ローンなどの借金を抱えている人の負担も増える。
物価高を抑えるための政策が、別の形で家計を苦しめる可能性があるわけだ。
「円高になれば全部解決」ではない
昨日のRClassでは、円安について取り上げた。
円安が進めば輸入物価が上がり、日本人の購買力が低下する。
ならば金利を上げて円高にすればいい。
話はそんなに単純ではない。
金利が上昇すると、住宅ローンだけでなく企業の借入コストも上昇する。
企業が工場を建てる。
新店舗を出す。
設備投資をする。
新しい事業を始める。
こうしたとき、多くの企業は銀行などから資金を借りる。
金利が高くなれば投資に慎重になる企業も増えるだろう。
その結果、景気や雇用、賃金にも影響が及ぶ可能性がある。
つまり、
円安にも痛みがあり、利上げにも痛みがある。
日本経済は今、その難しい局面に入っている。
一方、金利上昇が「うれしい人」もいる
ここまで読むと、金利上昇は悪いことばかりに見える。
しかしそうではない。
預金者にとっては逆だ。
日本では長い間、
「銀行に100万円置いていても、利息なんてほとんど付かない」
ことが当たり前だった。
金利が上昇すれば、普通預金や定期預金の金利も上昇する可能性がある。
債券の利回りも高くなる。
実際、日本の10年国債利回りは9月1日に一時3%に到達した。約30年ぶりの水準だ。
これは大きな変化だ。
これまで資産形成といえば、
「預金では増えないからNISAで株を買う」
という説明が非常に分かりやすかった。
しかし安全性の高い資産でも一定の利回りが得られるようになれば、資産配分の考え方も変わってくる。
ではNISAはやめるべきなのか
もちろん、そんな単純な話ではない。
金利が上がったからといって、長期の資産形成として株式投資の意味がなくなるわけではない。
特に40代なら、老後までまだ15年、20年以上ある人も多い。
長期・積立・分散というNISAの基本的な考え方を、日銀会合のたびに変更する必要はないだろう。
むしろ問題なのは、
「預金か株か」の二択しか持っていないことだ。
現金。
預金。
日本国債。
国内株。
海外株。
投資信託。
住宅ローンという負債。
金利のある世界では、これらをまとめて考える必要がある。
例えば、住宅ローン金利が上がっているのに、手元の現金をほとんど持たず株式へ全力投資しているなら、家計の耐久力を一度確認した方がいい。
逆に住宅ローンがなく、多額の現預金を持っている40代なら、金利上昇は必ずしも悪材料ではない。
同じ40代でも、金利上昇の意味はまったく違うのである。
40代が今やるべきことは「利上げ予想」ではない
9月17、18日に日銀が本当に利上げするのか。
1.25%になった後、さらに金利は上がるのか。
円は上がるのか。
株価は下がるのか。
専門家でも正確に予測することはできない。
だから40代がやるべきなのは、金利を当てることではない。
自分の家計が金利変動にどれくらい耐えられるのかを知ることだ。
まず住宅ローンの残高と適用金利を見る。
変動型なら、金利が0.25%、0.5%、1%上がった場合を想定してみる。
次に預金を見る。
生活防衛資金が十分あるか確認する。
そしてNISAなどの投資資産を見る。
株価が一時的に下落しても、生活費のために売却しなくて済む状態になっているか。
これだけでも、金利上昇への備えはかなり違う。
30年ぶりの世界に、40代はどう向き合うか
40代の多くは、社会人生活のほぼすべてを「超低金利の日本」で過ごしてきた。
住宅ローンは安い。
預金金利はほぼゼロ。
国債の利回りも低い。
それが普通だった。
しかし今、10年国債利回りは3%台に入り、政策金利も1.25%が検討されている。
これは単なる金融ニュースではない。
私たちが当たり前だと思っていた「お金のルール」が変わり始めている。
円安だけを見ていてもいけない。
株価だけを見ていてもいけない。
住宅ローンだけを見てもいけない。
借金、預金、投資、物価、そして収入。
全部が金利でつながっている。
40代は、住宅ローン、教育費、老後資金という三つの大きな問題が重なりやすい年代だ。
だからこそ「金利が上がったらどうするか」をニュースが出てから考えるのでは遅い。
金利を予想するのではなく、金利がどう動いても困らない家計を作る。
30年ぶりに戻ってきた「金利のある世界」で、40代に必要なのはその視点ではないだろうか。
