40歳になったら会社から「介護」の話をされる理由。親の介護で仕事を辞めないために今から知っておくこと

40歳になると、会社から介護休業などの制度について案内されることがあります。まだ親は元気なのに、なぜ40歳なのでしょうか。親の介護でキャリアを失わないために、働き盛りの今から知っておきたい仕事・家族・お金の備えを考えます。

40歳になった会社員に、会社から突然「介護休業制度」について案内が届く。

まだ親は元気だ。

自分自身も普通に働いている。

「介護なんて、まだ先の話だろう」

そう思って読み飛ばしてしまう人もいるかもしれない。

しかし、会社が40歳の社員に介護の情報を伝えるのには理由がある。

改正された育児・介護休業法では、介護離職を防ぐため、企業が労働者に対して介護休業や仕事との両立支援制度について早い段階から情報提供することが求められている。

そのタイミングの一つが40歳だ。

なぜ40歳なのか。

考えてみれば、この年代は絶妙な位置にいる。

自分は働き盛り。

会社では中堅から管理職。

住宅ローンがある。

子どもがいれば教育費も増える。

そして親は60代後半、70代、80代へ向かっていく。

つまり40代とは、

自分のキャリアと親の老いが初めて本格的に交差する年代

でもある。

介護は「そのときになったら考えればいい」と思いやすい。

しかし介護の厄介なところは、予告して始まるとは限らないことだ。

ある日、親が転倒する。

入院する。

認知症の兆候が出る。

車の運転が難しくなる。

一人暮らしが危なくなる。

そして突然、

「これからどうする?」

という問題が家族に降ってくる。

そのとき仕事まで辞めてしまわないために、40代の今から最低限知っておきたいことがある。

介護は「いつか」ではなく、突然始まることがある

育児には、ある程度の準備期間がある。

もちろん予想外の出来事はあるが、出産予定日があり、育児休業をいつから取るか考える時間もある。

介護は違う。

厚生労働省も、介護は育児と異なり、突発的に問題が発生することや、介護期間・方法が多様であることを指摘している。

昨日まで元気だった親が入院する。

退院後、一人では暮らせないと言われる。

家族会議が始まる。

誰が病院へ行くのか。

誰が買い物をするのか。

誰が役所へ行くのか。

誰がケアマネジャーと話すのか。

そして、

「近くに住んでいるあなたがやって」

となることもある。

ここで働いている本人が、

「もう仕事を続けられない」

と考えてしまう。

しかし、最初から退職を選ぶ必要はない。

「介護休業=自分が介護する休暇」ではない

ここは特に知っておきたい。

介護休業という名前を見ると、

「会社を休んで、自分が親を介護する制度」

だと思いやすい。

しかし制度の重要な役割は、それだけではない。

介護休業の期間を利用して、

介護認定の手続きをする。

ケアマネジャーを探す。

介護サービスを組み合わせる。

家族の役割分担を決める。

施設を検討する。

仕事と介護を両立できる体制を作る。

つまり、

自分が介護職になるための休みではなく、自分が仕事へ戻れる仕組みを作るための時間

として考えることが重要だ。

これは40代会社員にとって大きな違いになる。

自分一人で全部抱え込めば、仕事との両立は難しい。

だから外部サービスや制度を使う。

「自分が全部やらなければ」という発想から離れることが、介護離職を防ぐ第一歩になる。

親の介護で会社を辞めると、その後がかなり厳しい

親が大変なのだから、仕事を辞めて介護へ集中する。

一見すると家族思いの選択に見える。

もちろん、事情によっては退職が必要になることもある。

しかし40代で仕事を辞めることには、かなり大きな代償がある。

まず収入が止まる。

次に社会保険が変わる。

厚生年金の加入期間にも影響する。

再就職するときには、ブランクが発生する。

そして介護がいつ終わるかは分からない。

半年かもしれない。

3年かもしれない。

10年続く可能性もある。

介護が終わったとき、自分は50代になっているかもしれない。

そこから正社員として元の収入へ戻ろうとしても、簡単とは限らない。

だから、

「親を大切にする=仕事を辞める」ではない。

むしろ自分の仕事と収入を守ることも、長期的には家族を守ることにつながる。

40歳で会社から説明されるのには意味がある

現在の制度では、企業には介護離職防止のための環境整備や、介護に直面した労働者への個別の制度周知・意向確認などが求められている。

さらに、介護に直面する前の早い段階で制度を知ってもらうため、40歳前後の労働者への情報提供も行われる。

これは、

「40歳になったら介護してください」

という意味ではない。

介護が始まる前に制度の存在だけでも知っておいてほしい

ということだ。

実際、親が倒れてから、

「介護休業って何?」

「会社に制度があるの?」

「介護休暇と何が違うの?」

と一から調べるのは大変だ。

精神的にも余裕がない。

だから平時に知っておく。

防災と同じである。

まず会社の就業規則を一度だけ見る

40代になったら、一度だけでいい。

会社の就業規則や社内ポータルで、

「介護」

と検索してみてほしい。

介護休業。

介護休暇。

短時間勤務。

時差勤務。

テレワーク。

残業免除。

相談窓口。

会社独自の支援。

企業によって利用できる制度は異なる。

重要なのは全部暗記することではない。

「何かあったら、ここを見ればいい」

という場所だけ覚えておく。

それだけでも違う。

親にも聞いておいた方がいいことがある

そして40代になったら、親とも少しずつ話をしておきたい。

「介護になったらどうする?」

と正面から聞けば、嫌がられるかもしれない。

だからもっと軽くていい。

病院はどこへ行っている?

飲んでいる薬はある?

保険証や重要書類はどこ?

銀行や公共料金はどう管理している?

家は今後どうしたい?

車はいつまで乗る?

近所で頼れる人はいる?

こうした情報は、何も起きていないときなら普通の会話として聞ける。

ところが親が入院し、本人が意思表示できない状態になってから、

「通帳どこ?」

「薬は?」

「かかりつけ医は?」

と探すのは大変だ。

介護への備えとは、施設を予約することではない。

情報を少し共有しておくことでもある。

兄弟姉妹がいても「誰かがやるだろう」は危ない

兄がいる。

姉がいる。

弟が実家の近くに住んでいる。

だから自分は大丈夫。

そう思っていても、実際に介護が始まると事情は変わる。

兄には仕事がある。

姉にも家庭がある。

弟にも生活がある。

結果、

「一番動ける人」

へ負担が集中することがある。

特に危ないのが、

最初に頑張った人が、そのまま介護担当者になること

だ。

最初の病院付き添い。

次もお願い。

役所もお願い。

買い物もお願い。

気づけば全部担当している。

だから早い段階で役割を言葉にする。

病院担当。

お金担当。

連絡担当。

定期訪問。

できることを分ける。

家族だけで無理ならサービスを使う。

介護は善意だけで回そうとすると、誰かが壊れる。

「親のお金」を知らないこともリスクになる

介護では感情だけでなく、お金の問題も出てくる。

親の年金はいくらか。

預貯金はあるのか。

保険はどうなっているのか。

介護サービスへどこまで使えるのか。

これを知らないまま、

「子どもである自分が払わなければ」

と考える人もいる。

しかし、自分には自分の生活がある。

住宅ローン。

教育費。

老後資金。

40代は決して余裕のある年代とは限らない。

親の介護費用のために、自分の老後資金をすべて取り崩してしまえば、今度は自分の子ども世代へ問題が移る。

だからお金についても、

親の生活と自分の生活を一度分けて考える。

冷たい話ではない。

介護を長く続けるために必要な現実的な考え方だ。

会社には「早めに言う」

介護が始まったとき、

「会社に迷惑をかけたくない」

とギリギリまで黙る人もいる。

真面目な人ほどそうなりやすい。

しかし突然、

「明日からしばらく休みます」

となる方が職場は困る。

状況が見え始めた段階で、

「親の介護が必要になる可能性があります」

と上司や人事へ相談しておく。

まだ何も決まっていなくてもいい。

使える制度を確認する。

働き方を相談する。

必要になったら介護休業などを利用する。

制度は、

限界になった人だけが使う非常ボタンではない。

仕事を続けるために使う道具だ。

40代は「自分の老後」も同時に始まっている

親の介護を考えると、不思議なことに自分の将来も見えてくる。

親が70代、80代になった姿を見る。

身体が弱る。

病院へ通う。

車を手放す。

生活範囲が狭くなる。

そして気づく。

自分にも、いつか同じ時期が来る。

だから親の介護は、単なる家族問題ではない。

自分の人生後半を考える予行演習でもある。

どこに住むのか。

いくら貯めるのか。

何歳まで働くのか。

健康をどう守るのか。

家をどうするのか。

誰とつながっているのか。

40代なら、まだ修正できる。

親の老いを見ながら、自分の老後を少しずつ設計していけばいい。

最後に――親を守るために、自分の人生を捨てない

親が弱ったら助けたい。

それは自然な気持ちだ。

今まで育ててもらった。

恩返ししたい。

できるだけのことをしたい。

でも、

「できるだけのこと」と「全部自分でやること」は違う。

会社には制度がある。

社会には介護サービスがある。

地域には相談窓口がある。

家族がいるなら役割を分けられる。

そして、自分には自分の人生がある。

仕事を続ける。

収入を守る。

家族を守る。

自分の老後を準備する。

それらも大切だ。

40歳で会社から介護制度の案内が届いたら、

「まだ早いよ」

と捨てなくていい。

一度だけ読む。

会社の制度を確認する。

親と少し話す。

それだけで十分だ。

介護が始まっていない今だからこそ、できる準備がある。

40代からの人生再設計とは、自分だけの未来を考えることではない。

親が老いることも、自分が年齢を重ねることも含めて、

「それでも仕事と生活を続けられる仕組み」を先に作っておくこと。

親の介護が始まったとき、自分のキャリアまで終わらせない。

そのための準備は、40歳から始めても決して早すぎない。