会社を辞めたら健康保険と年金はどうなる? 40代が退職前に知っておきたい「お金と手続き」

会社を辞めると健康保険や厚生年金はどうなる? 任意継続、国民健康保険、家族の扶養、国民年金への切り替えなど、40代が退職前に知っておきたい手続きとお金の基本を整理します

会社を辞める。

長年会社員をしている人にとって、これは単に「仕事がなくなる」というだけの出来事ではない。

毎月振り込まれていた給料が止まる。

社員証を返す。

会社のメールアドレスがなくなる。

そしてもう一つ。

今まで会社が半分自動的に処理してくれていた、

健康保険や年金の仕組みからも離れることになる。

会社員時代は、給与明細を見ると、

健康保険。

厚生年金。

雇用保険。

所得税。

住民税。

いろいろ引かれている。

「こんなに引かれるのか」

と思ったことがある人も多いだろう。

ところが会社を辞めると、その見え方が変わる。

今度は、

自分で手続きをして、自分で払う

ものが出てくるからだ。

特に40代の退職では金額も小さくない。

住宅ローン。

教育費。

生活費。

親のこと。

老後資金。

ただでさえ支出が多い年代に、

「退職したら思った以上にお金が出ていった」

ということは避けたい。

今回は、会社を辞めたときに健康保険と年金がどう変わるのか。

40代会社員が退職届を出す前に知っておきたい基本を整理してみよう。


退職した翌日から、会社の健康保険は使えない

まず覚えておきたいのは、

会社の健康保険の資格は、原則として退職日の翌日に失う

ということだ。

例えば9月30日退職なら、10月1日から会社員時代の健康保険の資格はなくなる。

だから、

「次の会社が決まるまで、とりあえず前の会社の健康保険を使っておこう」

とはできない。

退職後は、新しい健康保険へ切り替える必要がある。

そこで主な選択肢は三つある。

1.以前の健康保険を任意継続する

2.国民健康保険へ加入する

3.家族の健康保険の扶養に入る

協会けんぽも、退職後の健康保険についてこの三つを主な選択肢として案内している。(教会けんぽ)

問題は、

「どれが一番得なのか?」

だ。

実は全員共通の答えはない。

退職前の給与。

前年所得。

家族構成。

住んでいる自治体。

配偶者の働き方。

退職理由。

こうした条件によって変わる。

だから退職前に比較することが重要になる。


選択肢1――健康保険の「任意継続」

会社を辞めても、それまで加入していた健康保険を一定期間継続できる仕組みがある。

これが、

任意継続

だ。

協会けんぽの場合、原則として、

退職日までに継続して2カ月以上の被保険者期間があること。

そして、

退職日の翌日から20日以内

に手続きをすることが条件になる。

加入期間は原則2年間だ。(教会けんぽ)

ここで重要なのが、

20日以内

という期限だ。

会社を辞めると忙しい。

離職票。

ハローワーク。

転職活動。

住民税。

年金。

退職金。

さまざまな手続きが重なる。

その中で健康保険を後回しにすると、任意継続を選びたかったのに期限を過ぎてしまう可能性がある。

退職を決めた時点で、

「健康保険どうする?」

は確認しておきたい。


任意継続すると保険料が高く感じる理由

会社員時代の健康保険料を見ると、

「毎月これくらいなら払える」

と思うかもしれない。

しかし退職後、任意継続の保険料を見ると、

「え、こんなに?」

となることがある。

理由はシンプルだ。

会社員時代の健康保険料は、基本的に会社と本人で負担している。

ところが退職すると、

会社が負担していた分も自分で負担する

ことになる。

協会けんぽでは、退職後は事業主負担分も本人負担となるため、原則として退職時に給与から控除されていた健康保険料の2倍程度になると案内している。ただし標準報酬月額の上限などがあるため、必ず単純に2倍になるわけではない。(教会けんぽ)

40歳以上65歳未満では介護保険料も関係する。

RClass読者の中心である40代には、ここも無視できない。


選択肢2――国民健康保険

もう一つが、

国民健康保険

だ。

自営業者や、会社の健康保険に加入していない人などが利用する公的医療保険で、退職後にこちらへ切り替える人も多い。

国民健康保険で注意したいのは、

保険料が「現在の無収入状態」だけで決まるわけではない

ことだ。

会社を辞めた。

今月の給与はゼロ。

だから保険料も安いだろう。

そう思うと驚くことがある。

国民健康保険料は、前年の所得や世帯人数などを基に決まり、計算方法や料率は自治体によって異なる。減免制度が用意されている場合もある。(教会けんぽ)

つまり、

去年まで高い給与をもらっていた40代が退職すると、

収入はなくなったのに保険料負担は重い

という時期が発生する可能性がある。

これが退職後家計の落とし穴の一つだ。


任意継続と国保、どっちが安い?

これは非常によくある疑問だ。

答えは、

計算して比較するしかない。

任意継続は退職前の標準報酬月額などを基に計算される。

国民健康保険は前年所得や世帯人数、自治体などによって変わる。

だから、

「年収○万円なら絶対こっち」

とは言い切れない。

さらに家族がいる場合は差が出やすい。

任意継続では、一定の条件を満たす家族を被扶養者として扱える。

一方、国民健康保険には会社員の健康保険と同じ意味での「扶養」という考え方がなく、世帯人数なども保険料に関係する。

つまり、

独身者と家族4人では答えが変わる可能性がある。

退職が決まったら、

現在加入している健康保険。

住んでいる自治体。

この二つで保険料を確認する。

面倒に見えるが、毎月払う金額なので比較する価値は大きい。


選択肢3――配偶者の扶養に入る

配偶者が会社員で健康保険に加入している場合、

配偶者の健康保険の被扶養者になる

という選択肢もある。

条件を満たせば、被扶養者本人の健康保険料負担はない。(教会けんぽ)

これは非常に大きい。

ただし、

「会社を辞めたから自動的に配偶者の扶養に入れる」

わけではない。

収入などについて加入先健康保険の扶養認定条件を満たす必要がある。

失業給付などが収入としてどう扱われるかについても確認が必要になる場合がある。

だから、

「妻(夫)の扶養に入ればいい」

と自己判断せず、

配偶者の勤務先や加入している健康保険へ確認する

のが確実だ。


健康保険だけではない。厚生年金も終わる

会社員を辞めると、健康保険だけでなく、

厚生年金の加入資格

もなくなる。

そして20歳以上60歳未満で、日本国内に住み、次の会社の厚生年金へすぐ加入しない場合などは、原則として国民年金への切り替えが必要になる。

日本年金機構も、会社を退職して次の会社へ入るまで期間が空く場合には、国民年金第1号被保険者への加入手続きを行う必要があると案内している。(年金ポータル)

ここでよくある勘違いが、

「転職活動中だから何もしなくていい」

というもの。

そうではない。

例えば、

9月30日退職。

次の会社への入社が12月1日。

この場合、間に厚生年金へ加入していない期間が生じる。

必要な国民年金の手続きをすることになる。


配偶者の扶養に入る場合、年金も変わる

配偶者が厚生年金に加入していて、自分が一定の条件を満たして扶養される場合には、

国民年金の第3号被保険者

になるケースがある。

この場合、自分で国民年金保険料を納める必要はない。

日本年金機構も、退職後に厚生年金加入者である配偶者に扶養され、第3号被保険者となる場合には、自身で国民年金保険料を納める必要はないと案内している。(年金ポータル)

健康保険の扶養と年金。

この二つは関連するが、手続きを全部ひとまとめに考えない方がいい。

「自分の場合は何号になるのか」

まで確認する。


失業して保険料が払えないときは、放置しない

会社を辞めた。

再就職がなかなか決まらない。

貯金も減ってきた。

国民年金保険料が負担になってきた。

そんなとき、

「払えないから放っておこう」

は避けたい。

国民年金には、

保険料免除・納付猶予制度

がある。

失業など一定の事情がある場合、要件を満たせば利用できる可能性がある。

日本年金機構も、退職・失業した人向けに免除や納付猶予制度を案内している。(年金ポータル)

重要なのは、

払えないことと、

何も手続きをしないことは違う

ということだ。

経済的に厳しいなら、利用できる制度がないか確認する。

40代は、

「社会人なんだから全部払わなければ」

と一人で抱え込む必要はない。

制度は、必要なときに使うためにある。


退職すると「住民税」も存在感を増す

健康保険と年金の記事だが、退職後のお金を考えるなら住民税も忘れたくない。

会社員時代は給与から天引きされていることが多い。

だから普段はあまり意識しない。

ところが退職後、

自分で納める形になると、

「こんなに払っていたのか」

と感じることがある。

住民税は前年の所得を基に課税される。

つまり健康保険と同じように、

今の収入が減ったから、すぐ負担もゼロになるとは限らない。

退職金があるからしばらく休もう。

そう考えるなら、

退職後に出ていく、

健康保険。

年金。

住民税。

生活費。

これらを最初から計算しておく。

「退職金500万円あるから500万円使える」

ではない。

退職後の固定費を引いた残りが、本当の余裕資金だ。


退職金を全部「自由なお金」だと思わない

例えば早期退職で、

通常の退職金に加えて500万円の割増。

合計1500万円。

銀行口座にまとまった金額が入る。

すると一瞬、

「しばらく働かなくても大丈夫だな」

と思う。

もちろん休む選択もいい。

長く働いたなら、少し休むことが必要な人もいる。

でも最初に、

1500万円を全部使えるお金だと思わない

ことだ。

健康保険。

年金。

住民税。

住宅ローン。

教育費。

生活費。

次の仕事が決まるまでの期間。

さらに老後資金。

それぞれ用途を分ける。

まとまったお金が入ったときほど、

「これは何年分のお金なのか」

と時間に変換するといい。


退職前に「毎月いくら出ていくか」を計算する

会社を辞める前に一度やってほしいことがある。

紙でもExcelでもスマホでもいい。

退職後の支出を書く。

住宅費。

食費。

水道光熱費。

通信費。

保険。

車。

教育費。

健康保険。

年金。

住民税。

その他。

例えば毎月の生活費が30万円。

社会保険や税などを考慮して、年間でさらにまとまった支出がある。

すると、

「貯金1000万円あるから3年以上大丈夫」

という単純計算が危険だと分かる。

実際に自由に使える期間はもっと短いかもしれない。

逆に、

「半年しか無理だと思っていたけれど、1年以上大丈夫」

と分かる場合もある。

数字にすることのメリットは、

漠然とした不安が具体的な問題に変わること

だ。


退職日を決める前に確認したいこと

退職を決めたら、人事担当者に確認する。

恥ずかしがる必要はない。

例えば、

健康保険の資格喪失日はいつか。

資格喪失証明書など必要書類はどうなるか。

離職票はいつ届くか。

源泉徴収票はいつ届くか。

退職金はいつ支給されるか。

住民税はどう処理されるか。

企業型確定拠出年金などの手続きは必要か。

会社独自の福利厚生はいつまで使えるか。

こうしたことを聞く。

長年会社員をしていると、

「辞める人間が細かいことを聞くのは気まずい」

と感じる人もいる。

でも、

あなたのお金の話だ。

遠慮する必要はない。


転職先が決まっている場合でも「空白期間」に注意する

転職先が決まっている。

だから健康保険も年金も大丈夫。

と思うかもしれない。

例えば、

9月30日退職。

10月1日入社。

なら比較的シンプルだ。

しかし、

9月30日退職。

11月1日入社。

なら、その間の扱いを確認する必要がある。

「たった1カ月だから」

と放置しない。

日本の公的年金制度では、転職時にも退職側・就職側それぞれ必要な手続きが生じる。(年金ポータル)

転職先が決まったら、

退職日と入社日の間が空いているか

を見る。

これは意外と重要だ。


任意継続は「一度入ったら2年間絶対」ではない

昔の制度のイメージを持っている人は、

「任意継続を選んだら2年間やめられない」

と思っていることがある。

現在はそうではない。

協会けんぽでは、本人が任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を申し出た場合も資格喪失事由になっている。

もちろん、新しい会社へ就職して別の健康保険へ加入した場合にも資格を失う。(教会けんぽ)

つまり、

退職直後は任意継続。

その後、状況が変わる。

ということもあり得る。

制度は変更されることもあるので、実際に退職するときには最新情報を確認することが大切だ。


40代は「会社が払ってくれていたもの」を知る年代

会社員でいると、

給料=会社からもらっているお金

と思いやすい。

しかし実際には、会社は給与以外にもさまざまなコストを負担している。

社会保険料の会社負担。

福利厚生。

退職金。

企業年金。

健康診断。

各種手当。

会社を辞めると、

今まで見えなかったものが見えてくる。

だから転職するときも、

「年収600万円から650万円になった」

だけで判断しない方がいい。

退職金は?

企業年金は?

健康保険組合の給付は?

住宅補助は?

家族手当は?

会社員の待遇は、

額面年収だけでは分からない。

これは40代ほど重要になる。


独立・フリーランスになる人は、さらに慎重に

会社を辞めて独立する。

フリーランスになる。

起業する。

40代では、そういう選択もある。

自由度は上がる。

うまくいけば会社員以上の収入を得ることもできる。

ただし、

「売上=会社員時代の年収」

では比較できない。

会社員時代には会社が負担していたものを、自分で負担するからだ。

健康保険。

年金。

税金。

仕事道具。

交通費。

通信費。

休暇。

そして、

働かなければ売上が発生しない期間

も考える。

会社員で年収600万円だったから、

独立後も売上600万円なら同じ。

とは限らない。

独立を考えるなら、

売上ではなく、

経費や社会保険・税負担などを含めて最終的に生活へ回せる金額

を見る。


会社を辞めること自体を怖がる必要はない

ここまで読むと、

「会社を辞めると面倒だな」

と思うかもしれない。

確かに手続きは増える。

でも、必要以上に怖がる必要はない。

制度を知る。

期限を確認する。

金額を比較する。

必要な手続きをする。

基本はこれだけだ。

むしろ怖いのは、

知らないまま会社を辞めること

だ。

健康保険料が想像より高かった。

住民税の支払いを忘れていた。

国民年金の手続きをしていなかった。

任意継続の期限を過ぎた。

こうしたことは、事前に知っていれば避けられる可能性がある。


退職前に作っておきたい「4つの数字」

40代で会社を辞めるなら、最低限この4つを把握しておきたい。

① 毎月の生活費

家族が普通に暮らすためにいくら必要か。

② 退職後の健康保険料

任意継続と国民健康保険を比較する。

③ 年金・税などの負担

会社員時代に給与天引きだったものを確認する。

④ 無収入で生活できる月数

預貯金などから逆算する。

この4つが分かると、

「とにかく早く次の会社を決めなければ」

という焦りが少し変わる。

6カ月余裕がある。

1年ある。

逆に3カ月しかない。

現実が見える。

そして現実が見えれば、戦略を立てられる。


最後に――退職後に最初にやるのは「転職サイトを見ること」だけではない

会社を辞めた。

自由になった。

さあ次の仕事を探そう。

もちろんそれも必要だ。

でも、その前後で一度、

自分の生活を支えている制度を確認してほしい。

健康保険。

年金。

税金。

雇用保険。

退職金。

企業年金。

会社員時代は、会社が多くの手続きをしてくれていた。

だから意識しなくても生活できた。

会社を離れると、それを自分で管理することになる。

これは面倒でもある。

しかし見方を変えれば、

自分の人生のお金を、自分で把握する機会

でもある。

40代からの退職は、20代の転職とは違う。

家族がいる。

家がある。

教育費がある。

親も年を取る。

自分の老後も近づいている。

だから勢いだけで辞めない。

でも、制度が面倒だからという理由だけで嫌な会社に居続ける必要もない。

調べる。

比較する。

計算する。

手続きをする。

それだけでいい。

会社を辞めても、健康保険は選べる。

年金にも制度がある。

支払いが厳しい場合には、条件に応じた支援制度もある。

知らないことが、一番高くつく。

退職届を書く前に、

次の会社だけではなく、

「退職翌日の自分」

まで一度想像してみる。

健康保険はどうする?

年金は?

毎月いくら必要?

何カ月なら働かなくても大丈夫?

この答えを持って会社を辞めるのと、

何も知らずに辞めるのでは、

同じ退職でも安心感は大きく違う。

40代からの転職・退職で必要なのは、

勇気だけではない。

制度を知り、数字を知り、自分で選べる状態を作っておくこと。

それが、会社を離れた後も人生を止めないための準備になる。